見学・デモ授業「ボストンの小中学校」

平成20年9月TFF有志でボストンの小学校を訪問。
クリエイタが多く在籍するTFFでは、スタッフ本人の制作活動への何らかの刺激、また学校や子どもを対象とした活動をしていることもあり、アメリカの教育現場を直にみて、これからの活動に何かヒントを得られるのではないか、との短い旅を計画した。

●けっこう物価高
ボストンへは直行便がないため、予想以上に遠く感じられた。到着が深夜だったが、ホテルの向かいの24時間スーパーへ繰り出すとさっそくアメリカ人の偉大な胃袋を思いしらされた。渡米したスタッフもみな10年以上アメリカを訪問していない。
日本の物価にくらべアメリカの物価は急速に高騰したのか、素材だけならまだしも、デリの総菜やレストランの食事は朝食だってかなり高い。それなりの金額のものだとその差はあまり感じないが、日本で100円、200円で買えそうなものが軒並み倍近い価格に感じる。ちょっとでも人の手を介したものは、それ相当のコストが適正に計上されたいるようだ。

●小学3年生のアート授業体験
さてさっそく翌9月19日(現地)は、現地でのサポートをかって出てくれたアメリカ人デザイナーで折り紙の達人でもあるMr.グレッグとともに小学校へ出発。ボストン中心部から車で30分ほどの Atkinson Elementary School に向かう。フラットな二階建て、芝生の校庭、大型駐車場と典型的なアメリカの小学校。廊下には長いスロープがあり、UD対応もきちんとされている。校内はおどろくほどキレイだ。

ランドリー校長や、図工の専任職員と相談し急遽書道のデモをすることに。クラスは3年生の1クラスで児童数は25名。何となく騒然としたイメージをもっていたがドアを開けると静かに先生の登場を待つ子どもたちの姿があり、先生の威厳が保たれていることを感じた。
授業は人間の体型を正確に描くための人体説明と描き方、日本の授業よりも、かなりリアルに教えている。筋肉組織の話しもしていたようだ、と思う(英語力の問題で)。

同行した日本の小学生1名もきちんと机をもらい一緒に授業をうけたが、言葉が通じなくても「分かりやすかった」と感想を漏らしていたことから、多人種・多言語のクラスもこなしている先生方のキャリアを感じた(これは後で訪問した2校目で分かったことだが英語の分からないヒスパニック系の子どもも普通に通っている現状がある)。

●日本の墨と筆 ボストンで大活躍
専任の先生の授業を早めにきりあげて頂き、日本から持って行った墨と筆の出番。漢字とひらがなの話しをし、TFFスタッフがあちこちカナで名前を書いてあげると予想以上に喜んでくれた。
何人かの子どもたちから「家族の名前も書いて欲しいんだけど」と家族想いのリクエストが。時間がおしMr.グレッグもヒヤヒヤしていたようだが、生徒全員+家族の名前を墨で書いてデモは終了。1校目ですでに、プレッシャーから開放されたように達成感を味わえた体験であった。
Atkinson Elementary School の職員のみなさん、こどもたち、本当にありがとうございました。

●幼少中一貫校を見学
同日午後はTFFスタッフは二手に分かれて行動。
代表手塚と小学生1名はボストン空港と市内の中間にある Lyndon Pilot School を訪問。ここは向こうでいうK-12。キンダクラスも午後3時まで授業(?)を行っている。親は助かりますね!
この学校には遅れて到着したこともあり急遽いろんな学年を一気に見学することに。

小学4年生の選択授業の図工をやはり見学。学年合同の選択のため何となく点在して活動していた。だまし絵のように自分の名前をタイポグラフィ化するようだが、男子の多くはマーベルのコミックを参考にしていた。先生に尋ねると度々人体デッサンの見本や、コマワリなどの参考にすることがあるそうだ。
日本から参加の小学生も4年生だったことから、野球の話しや、同じブランドの衣類だったことなど、単純な要素ながら目で交流している様がちょっとおかしかった。

●ボストンの中学生から質問ぜめ
その後は小学生のPC、理科、社会科、語学など見てまわり、最後に中学生クラスに立ち寄ったがここは反応がまったく違った。担任の先生が授業を中断してくれ、「せっかくなので日本の話しをきこう!」ということに。
ファッション、勉強、スポーツ、食べ物など色々な質問が飛び出す。特に野球ではレッドソックス派かヤンキース派に別れていたようで、日本人はどっちだ!といった具合。岡島最高だね。なんて声もあったが、きいた事のない韓国籍と思われる選手の名前がでてくるので、いまだ中国人、韓国人、日本人の区別はつかないようであった。女子にはクリケットが人気のようだった。

デモこそしなかったが、こういった末端の会話がいい。結局ただの人間同士であることを子どもが感じられればいいのではないか。いつか、この日であった人間が再会する機会があれば、、、楽しみである。
直接話す、話せなければ接触する、一緒に遊ぶ、学ぶ、悩む、何かを一緒につくる、といった渡米の目的がすべて達成されたワケではないが、学校関係の事業に携わる者として、アメリカの学校、先生、生徒と直接出会えたことはこの上ない楽しい出会いと体験であり、財産である。

●Boston Chirdren’s Museum を訪問
さて別チームのスタッフは、日本からアポイントをとり、ミュージアムの日本の担当者と面会することができた。このミュージアムでは現在日本に関するエキシビジョンもあり、日本人スタッフも常駐してらっしゃるようだ。
とてもNPOが運営しているとは思えないほど立派な建物で、欧米と日本のNPOの歴史と規模の違いを実感。ちょうど日本の祭りを守り続ける地域のように、ここボストンではこの子ども美術館が受け継がれた街の財産の一つなのである。

展示内容も大変充実している。どれをとってもあまり日本ではみられないような素材とその展示方法が秀逸でありセンスの良さが光る。日本からもだいぶ色々なNPO等が訪れそのノウハウを学んでいるようだが、もっとも困難なのが行政に頼らない運営部分であろう。これだけはいかにノウハウを伝えて頂いてもそのまま日本には持ってこれない。
子どもとクリエイティブは私たち団体も関心を持っているテーマだ。現在日本で働く若いクリエイティブ従事者には、創造力に大きな問題を感じている。商業デザイン、アート、趣味のアート、、、このヘンの棲み分けがきちんとされないママ仕事に入ってくるケースが多く、視野が全体に狭いため、腕のいいディレクターが減ってきている。
脱線したが、この手の活動拠点は今更新たなハコとして考えるべきではない。日本ならでは、狭い街ならではの色々なアイデアが必要になってくる。
Lyndon Pilot School で見学した際も街の建物をかりて色々な学校の子どもたちが、合同で美術館運営をしているという話しをきいた。折しもそこへ搬入する作品を額装している子ども達にであったが、真剣そのものでいかに自分の絵や写真お見栄えよくできるかを悩んでいた。これらは授業でなく放課後を使っての自主的な活動でチャリティ活動である。

ボストンといえばMITや、ハーバード、ボストン大学と有名大学がひしめく土地柄だけに、教育には熱心なことは想像に難くなかったが、情操教育への関心も高く支援も真剣に行っていることがわかる。また街のあちこちにきれいに手入れされた芝生の公園や野球場が点在している。土日であっても利用状況に余裕があることから十分に行き渡っている様子。野球少年の母としては、うらやましい限りである。

学校交流について間単にまとめたが、帰りに1日だけよったニューヨークも15年ぶりである。このレポートもそのうち(?)まとめたいと思う。

さて最後になりましたが、こんな素敵な経験をさせて頂いたボストン日本人会、折り紙マスター素敵なMr.グレッグ、ドン・東島さん多くの方々に深く感謝いたします。
(手塚)